メディア・バイアス

メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)読了。ここ2年くらいで耳にするようになった科学技術リテラシーについて考えさせられました。大人になるまでの必読書に指定したい本です。テキストとして使うなら、ジャーナリズムに関する部分と科学データの読み方に関する部分を分けて読むとわかり易いと思われます。メディアが自分達が作りたいストーリーにあうように情報を切ったりつなげたりすることはまだまだ多いようですね。破線のマリス (講談社文庫)を読んで、珍しいことなのかと思ってました。
白インゲン豆ダイエット問題のときは、よく得体の知れないものを食べられるなあなんて呑気に考えていました。深刻な被害が出てたんですね。でもやっぱりそこまで変なダイエット法が受け入れられる感覚が理解できません。痩せてて不健康、太ってて健康、どちらがいいのか・・・。データを正しく読み取るのは、扱ってる内容によって単位も異なるし、物質名も複雑だったりするので難しいことなのかもしれません。でも、なんだかいかがわしいと疑ってかかる感覚は誰もが必要だと思います。高校生くらいまでには身につけておけば、その後の被害も小さいのでは。
水からの伝言」について。以前著者の講演をきく機会があり、どうやって水の結晶の撮影をしているのかが気になって参加したものの、そういうことを質問する雰囲気じゃなくて目立たないようにじっとしてました。
興味深いのは、農薬を使わずに育てた農作物は、作物自身が体内で天然農薬を作っているという研究結果。お金とモノから解放されるイギリスの知恵 (新潮文庫)に、コーラばかり飲んでいて、牛乳は嫌い、野菜、肉、魚も食べないけど健康という子ども(イギリス人の食事)と、添加物ゼロの食品と有機野菜だけの食事をしているのにアトピーぜんそく持ちの子ども(日本人の食事)を挙げて、栄養のバランスが良いイコール健康とはならないのではという記述があります。この本は、イギリスと日本の生活対比論といったところで、先の記述も科学的根拠に基づいているわけではありません。無農薬野菜・有機野菜を食べれば食べるだけ天然農薬を体内に取り入れてどんどん不健康になっている悪循環が始まっているのかもと私が考えただけです。アトピーぜんそく持ちの子どもの食生活の調査研究があれば、天然農薬との関連の有無がわかりますね。健康にいいと思っていた食物が逆効果だとすると、親は悲惨なことになりそうです。
サイエンスコミュニケーションでは、わかりやすさと正確さは両立するかという課題があります。相手の理解できる言葉に置き換えて説明しようとすると、相手の年齢やバックグラウンドによってどうしても限界が存在します。これまでの経験から、正確に伝わることを目標として、本質が伝わるのが最低ライン。相手が理解できる範囲内で、厳密に言うと違うけど大体そんな感じというのが限界だと考えてます。なんとか着地点を見つけないと相手は宙ぶらりんになってしまいます。場所がミュージアムであれば、ミュージアムスタッフはビジターに正確な情報を伝えることも大切だし、ビジターを不安にさせないことも大切です。どちらがより大切なのかはミュージアムの性格によります。
日常生活では個人の知識。メディアを信じすぎない本能的な感覚も大切だと思います。天気予報は80%信用するけど、残り20%は空を眺めて自分の勘を信じるようにしてます。外れても自己責任だから仕方ないです。